2008/05/23 vsパイレーツ @宝塚 

 

1.プロローグ

 「はぁ・・・・・・明日は試合でやんす・・・・・・。」

 キタウラは、ため息をついた。

 

 試合前日といえば、普通誰もが、小学校時代の遠足前日のように、興奮しすぎてなかなか寝付けずにいる時間であるはずなのに、彼はなぜこうも落ち込んでいるのだろうか。

 

説明しよう。

 スラッガーズにおいて栄光の左の一番バッターという称号を背負って早3年目。しかし、彼はなかなか結果を残せずにいた。なかなかと言うより、まったく残せていなかった。

何たって、彼は公式戦でいまだにヒットが打てていないのだ。

 

 今日だって、チームの一つ上の先輩で、最近少し調子に乗っているヒロシに

 

「キタさんはベースは弾けても、2塁ベースは踏めないよね。ハハハハハ。」

 

などと言われる始末。

 

「くそぉ・・・・・・あの野郎、いつか見返してやるでやんす・・・・・・!!!」

自然と、彼の握り拳は固くなっていた。

ベッドの中で怒りに身を震わせながら、そんなことをもやもやと考えているうちに、彼は眠りに落ちていった。

 

 

2.華麗なる変身

次の日、四条河原町で待ちかまえるキタウラのあまりの変身ぶりに、スラッガーズの面々は息を呑んだ。

普段のキタウラ

 

 

 

 

 

 

試合当日のキタウラ

 

 

 

 

 

 

 

 

な、なんだってーーーー!!!!

 

 

 

 

 

どこか違う、とかそんなレベルを超越し、精神面を中心に違う世界へと住む場所を変えたような変身ぶりだった。

 

唖然とするメンバーを前に、臆面もなく本日の野望を話すキタウラ。

 

かくして、本日スラッガーズは、外道大学スラッガーズとして、宿敵パイレーツと戦うこととなった。

 

 

 

外道大学スラッガーズ応援歌  作詞:ヒロシ

 

大文字の麓 都の東北

雄々しく生きる 我ら外道ナイン

 

敵の弱点 知り尽くし

謀略 暴力 力の限り 

 

誠心誠意 勝利をつかむ

正々堂々 外道を生きる

 

嗚呼 永遠なれ スラッガーズ

迷わず行けよ 外道の道を

 

 

 

 

3.外道vs外道

外道大学スラッガーズのスタメン

 

1 遊 キタウラ・・・言うまでもなく、本編の主人公。

 

2 中 幽血(ゆっち)・・・彼の守るセンターに打球が飛べば最後、飛んだボールは必ずアウトにされることから、センターは「打球の墓場」と呼ばれている。 

 

3 捕 小夜魔(こやま)・・・彼の左手からは、一瞬で人の脳細胞を100万個死滅させる臭気が漂ってくる。

 

4 一 臼猪(うすい)・・・普段は温厚な顔をしているが、それは単なる仮面に過ぎない。彼が小学生だった頃のエピソードの残虐さと言えば・・・ここに書くのもためらわれるくらいである。下のエピソードはほんの一例である。

若かりし頃のことを話す、臼猪。

 

5 三 匪呂死(ひろし)・・・本レポ筆者。妄想でレポートを書いてしまう悪い癖がある。

 

6 左 牛角(なかむら)・・・彼がレフトを守る際、どんなに大きなフライでもタッチアップするのは危険である。なぜなら、彼のバックホームは、どんなランナーでも刺して殺してしまうことから「殺人バックホーム」と呼ばれているからだ。

 

7 投 羅瑠腑(らるふ)・・・いかにバッターを合法的に殺れるかを、日々思案している。「海賊(パイレーツ)ハンター」の異名を持つ。

 

8 右 鬼汰打(きただ)・・・彼の下宿は酒・エアコン・PC完備のホテルとして、多くの外道ナインに利用されている。しかし、最近はそのベッドを中心に老朽化が進み、過疎化が進行しつつある。・・・・・・って、普通の紹介じゃん。

 

9 二 楳田(うめだ)・・・相手ピッチャーの裏をかき、素早い身のこなしと、相手守備をぶちかます剛力によって、二塁を落とし入れる姿から「あれは盗塁じゃない。強盗だよ。」と敵に恐れられる。

 

 

 

そして、とうとう戦闘が開始・・・

 

と思ったら、何故か小夜魔が怒り狂っている。

 

楳田「どうしたんだ。小夜魔!」


小夜魔「どうしたもこうもあるかっ!!!奴ら、俺とゆ〜人間を出し抜いてあいさつを済ませちまった!!!許せねぇぇ〜〜〜〜!!!!」

 

どうも、小夜魔が死合球を取りに行っている間に、両軍のあいさつが終わっていたことに腹を立てているようだ。

 

牛角がつぶやいた。

「おい、気をつけろよ・・・・・・そんなことが出来るとは、敵もなかなかの外道だぜ・・・・・・。」

 

大きな体を揺らし、臼猪が叫んだ。

「そりゃぁ、ちょうど良いぜぇ!!!外道には外道あるのみよぉ!!!」

 

そのやりとりを聞いていたキタウラは、ネクストバッターズサークルで不気味な笑みを浮かべて、一人クックックッと笑った。

そして、ゆっくりバットをひと撫で、ふた撫でした。

 

鬼汰田が言った。

「・・・お腹すいたでやんす・・・。」

彼はお腹がすくと、力が出ないタイプの人間だった。

 

 

4.序盤

 

1回表

本日の斬り込み隊長であるキタウラの放った打球はショートへ。

 

ダメか・・・とベンチが落胆しかけた瞬間、事件は起きた。

 

 

 驚愕の打球に怯えるショート。

 

記録はヒット!!!

彼にとっての公式戦初ヒットが出たのである。

 

一瞬、キタウラの目元にキラリと光るものが見えた気がした。これが「鬼の目にも涙」というやつだろうか。

 

 

そのキタウラの気迫に続きたいスラッガーズだったが、後続の幽血、小夜魔、臼猪が続けず、この回0点。

 

 

その後、2回裏まで両チーム見せ場無く、投手戦の様相を呈してくる。

 

 

3回表。

お腹をすかせた鬼汰田、爽やか楳田が凡退し、2アウトでバッターは、もちろんキタウラ。

 

「昨日までのキタウラとはちょっと違うぞ・・・ククク」

 

そう言い残してバッターボックスに向かったキタウラ。

何かいつもとオーラ(というより身長)が違うキタウラ。

 

下の人に助けられながらも、2安打目。ノリにノっているといった感じだ。

そして続くバッターは、幽血。

同回生の気迫に答えないわけにはいかない。

 

「どぅおおおりゃぁぁぁあああああ!!!!!!!」

 

豪快な声とは対照的に、力なくセカンドに転がる打球。

 

幽血はにやりと笑った。

 

次の瞬間だった。

 

 

ドカァァァァーーーーーーン!!!!!!!

白煙に包まれる宝塚球場。

 

 

牛角「げほっげほっ・・・派手にやってくれるぜ、幽血さん・・・」

 

そして、次第に煙が晴れてくると、

 

 

 

相手セカンドは無惨な残骸となっていた。

 

 

幽血「打つ瞬間にボールに爆弾を忍ばせておいたのよ。ヒヒヒ。」

臼猪「・・・これぞ外道高校の本領発揮!!!」

 

 

幽血のラフプレーに我慢ならないパイレーツナイン。

 

 

 





 

 

パイレーツの猛抗議に対して、キタウラは冷静にこう答えた。







 

 

もはや、誰も彼に反論できる者はいなかった。

 

死合は続行され、その後小夜魔の火の出るようなセンター前ヒットが出て、2アウト満塁の大チャンスで、バッター臼猪。

 

 

しかし、体の大きな彼の心は意外にも、そのチャンスの重さに耐えきれず、三塁ゴロ。

なかなかスラは先制点を取ることが出来ない。

 

 

晴れた日の翌朝、大雨が降るように、チャンスのあとにはピンチがやってくるものである。

 

パイレーツがメンバーを失った怒りをバットに込めて、スラッガーズに襲いかかり、同時に死球やエラーが重なり、3回、4回と、それぞれ2点ずつ奪われる。

 

 

スラの攻撃は・・・・・・言うまいて。

 

 

 

5.恐れていた事態

 

5回裏

 

やっと調子を取り戻してきたのか、ピッチャー羅瑠腑は簡単に2アウトを取り、意気揚々。

そのまま、リズム良く次の回に・・・と思うと、その後3連打と、パスボールで2点を取られる。次のバッターを2ストライクと追い込んだあとの4球目。

 

 

 

羅瑠腑「く、くそぉぉぉ!!!不甲斐ないぜ・・・!!!!

よぉし!!!!!!本当の俺の力を見せてくれるわ!!!!

  喰らえ!!!スピントルネードスペリアル!!!!!!」

 

 

ぐるぐると回り始めたかと思うと、どんどんその回転を速める羅瑠腑。

いつその身から白球が放たれるのかどうかも分からない目にもとまらぬスピードになっていく。

 

 

そして次の瞬間、宝塚グラウンド全体に、アンビリーバボーな事態が起こる。

                                               

 

 

 

キャッチャー小夜魔を襲った悲劇。

 

 

キャッチャー小夜魔(享年19歳)は、羅瑠腑の見たこともない遠心力ボールに対応しきれず、腹を見事にえぐりとられる。

 

 

「こっ、こやっ・・・、小夜魔ぁぁぁあああああ!!!!!!!!」

 

駆け寄るナイン。何度も彼の名前を呼びかけるも、返事はない。

 

 

 

ちなみにバッターは振り逃げ扱いとなり、悠々1塁に居座っている。

 

 

小夜魔の無惨な姿に嘆き悲しむスラメンバーに、檄を飛ばす羅瑠腑。

 

「それはそれ!!」「これはこれ!!」




そ・・・っ、そうかっ!!!

極限状態において発せられた羅瑠腑の名言により、何かを取り戻したスラエイト。(一人減ったため)

頬に流れる涙を拭いて、元の守備に戻るメンバー。

 

羅瑠腑は、次のバッターを見事に3ゴロにしとめ、何とか失点3で切り抜ける。

 

 

6回にも2点を加えられ、6回裏終了時点でスコアは9−0。

 

 

し、しかし!

最終回、外道大学スラッガーズは、何度でも生き返って襲いかかるゾンビのような粘り強さを見せる。

 

 

 

6.立ち上がれ!スラ丸!

 

7回表

先頭、羅瑠腑が凡退後、8番鬼汰田。

ここまで2三振とからっきし打てていない彼だったが、この打席の彼は違った。

 

「こ、これでどうでぃぃぃぃぃ!!!!!!」

 

 

 

 

万感の思いを乗せた打球(?)は、ライトの頭上を越える2塁打!!!

 

拍手を送るキタウラをはじめとするスラ一同。

 

 

 

鬼汰田に続けと言わんばかりに、楳田は四球で出塁。

キタウラは、今日3本目のヒットヒットヒット!!!

もう神懸かり的な力が彼に宿ったとしか言いようがない。

 

幽血はセカンドの二の舞になることを怯えるサードを狙い、エラーを誘い、鬼汰田が帰り1点。

 

次のバッターは一度は羅瑠腑の剛球によって死んだはずの小夜魔。

 

三途の川で、「もう後がないんだ==」と言って、戻ってきたらしい。

 

 

結果は・・・・・・死球。

小夜魔は二度死ぬ。

 

しかしこれで、9−2。

 

臼猪凡退後、匪呂死がフォアボールを選び、この回3点目。

 

なおも満塁で、おせおせムードの中、バッターボックスは牛角。

 

・・・しかし、彼の様子を見ると、どこかおかしい。

身体はそわそわし、顔はどこかにやにやして、いつもの落ち着いた雰囲気ではない。

 

これは、やばいと感じた筆者が、タイムをかけようとした瞬間、

 

 

かーーーーーん・・・・・・・

 

 

打球は力なく打ち上がり、セカンドの手中に収まった。

 

 

試合終了。9−3でパイレーツの勝利。

 

 

 

一塁ベースで泣き崩れる牛角に、何故そわそわしていたのか尋ねてみた。

 

 

 

 

 

・・・彼は正直な奴だった。

 

 

7.ハッピーエンド

 

たった一人、3安打を放ち、気を吐いたキタウラに他のメンバーは思わず、阪急電車の中で、

 

 

 

 

そして、不振に悩む牛角と臼猪は、キタウラがどうやってあれほどまでに打てるようになったのか、尋ねた。

 

「キタウラさん。教えてください。どうやったら、そんなに上手くなれるんですか?」

 

 

 

キタウラは、おもむろにこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<完>

 

ス 0000003 3

パ 002232× 9

 

1  遊  北浦  遊安  中安 三振 一安

2  中  渡辺優 左飛  二安 投ゴ 三失

3  捕  小山  左飛  中安 三振 死球

4  一  臼井  二ゴ  三ゴ 遊飛 三振

5 三→投 齊藤  二ゴ  投ゴ 中2 四球

6  左  中村  右飛  二失 三ゴ 二飛

7 投→三 渡辺良 左邪飛 二ゴ 二飛

8  右  北田  三振  三振 右2

9  二  梅田  一飛  三失 四球

 

 

試合メンバー、スコアを書いてくれた大久保、でんでん両マネージャー、そして読んでくださったみなさんに感謝してます。たぶん。